空き巣には入られなかったけど、錠前を交換する費用を請求してやりたい!

jyoumae_koukanあれは長い夏休みが明け、やっと小学校に通う子供たちの給食が始まった日のことだった。その日ようやく自分の時間ができた私は嬉しくなって3つ離れた駅にあるショッピングモールにでかけた。一人で気ままに買い物できるって、何て幸せなんだろう。新しくオープンした雑貨屋さんで少し買いすぎてしまった私は、だけども機嫌よく帰途についた。

 最後の角を曲がり、自分の家が見えたところで異変に気づいた。私の家の前にパトカーが止まっている。近所の人も数人集まっている。一瞬子供たちに何かあったんじゃないかと背筋が凍ったが、子供たちはまだ学校から帰ってないはずだ。すると家主を見つけた近所の奥さんが私を見つけ、おまわりさんに「この家の人です!」と言って私を指差した。ますます嫌な予感がして、鼓動が早まった。

おまわりさんは私を認めると、「○○さんですか?」と私の名前を確認し始めた。おまわりさんとこんな風に面と向かって話すなんて初めての出来事なので、緊張してしまう。すると「先ほどお宅に空き巣が侵入しようとしていたそうです」と驚愕の事実を告げられた。え?空き巣?現実を認識するのにしばらく時間がかかったが、おまわりさんの話によると、ほんの一時間ほど前に見知らぬ人が我が家の玄関前でゴソゴソ何かしているのを、先の近所の奥さんが見つけて声をかけたところ、その見知らぬ人がものすごい勢いで逃げて行ったそうだ。その奥さんがドアを見ると、バールか何かでこじ開けようとした形跡があり、急いで警察に電話したとのこと――。

 「未遂に終わって本当によかったです」とおまわりさんは言ってくれたけれど、玄関の錠前はどう見ても壊れていて、もうとてもじゃないけれど使えるとは思えない。空き巣には入られなかったからよかった、とは到底思えず、できれば錠前を交換する費用を請求してやりたいくらいである。結局その日私は恐怖と怒りで眠ることができなかったのだった。